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タワーマンション活用の行き過ぎた節税、国税庁がチェック指示(H28.2.2追記更新)

2015/12/15

タワーマンションという超高層マンションをご存じですか?

略して「タワマン」とも呼ばれています。

報道によると、このタワマンを使った節税方法の中には、租税回避(相続税の課税を逃れる)に当たるもの、見逃せないものがあるとして、国税当局が今後チェックを厳しくすることを検討しているそうです。

タワマン活用による節税

平成27年1月から相続税の仕組みが改正され、相続税が事実上増税となりました。

これに前後して相続への関心が高まっている中、いわゆる富裕層を中心に、莫大となる相続税を節税することを目的に、このタワマンの一室を買う人(区分所有する人)が増えています。

このタワマン節税とは、あえて、金融機関からローン融資を受け高額なタワマンを買った上で、賃貸用物件として貸し出すという方法を採るものです。

これにより、相続税を計算する際の相続財産評価額(評価額)が、同額の現金や預貯金を相続する場合に比べて8割ほど減らし、最大で2割程度にすることが可能となるのです。

つまり、購入額5億円のタワマンを買うと、その評価額がわずか1億円となるわけです。

ただし、この方法が可能な物件は、主として東京都心に立地する超高層マンションで、かつ、その眺望のすばらしい上層階であればあるほど良いとされています。

このような物件であれば、購入後直ちに実勢価格の下がらない上、売ろうと思えば直ぐにでも買い手が付くため、資産価値が落ちにくいからです。

不動産は相続税評価を下げるのに効果あり

誤解があるといけませんが、こうした節税方法そのものは脱法行為ではありません。

一定の条件の下であれば、税務署に行う相続税の申告の際、このような評価額となりましたと、堂々と申告書を作成し提出することができます。

それは、不動産特有の相続税評価の仕組みがあるためです。

相続税における財産評価は原則「時価」とされています。

現金や預金の評価額はそのままの額ですが、不動産については「時価」を出すことが難しいこともあって、国税庁が定めている算出ルールにより評価額を定めるのが一般的です。(もちろん、実際に売却すれば、その価額を時価と申告することも可能ですが)

まず、土地については、国税庁が毎年7月発表の路線価によるのが基本です。

この路線価は、土地の時価(実勢価格)の8割程度に設定されていると言われています。

次に、建物については、固定資産税評価額によることとなっています。この額は、建物の所有者などに毎年市区町村から送られてくる納税通知書を見ると分かります。

そして、建物の固定資産税評価額は、時価の概ね40~60%程度となっていると言われています。

このため、国税庁の算出ルールに従うと、不動産の評価額(相続財産評価額)は「実勢価額」に比べ、土地が2割下がり、建物が4~6割下がるということになります。

タワマンでは更なる節税が可能

このことを踏まえて、都市部のタワマン(超高層マンション)を見ると、こういうことになります。

マンションの敷地部分(土地)は、都市部に立地し地価が高くても、全体の敷地面積を戸数(専有持ち分)で割りますので、1戸当たりの敷地面積が小さくなることから、土地の評価額は戸建ての敷地に比べ相対的に安くなります。

一方、マンションの建物部分は、個々に固定資産税評価額が定められていますが、同一マンション内で専有持ち分(面積)が同じであれば、高層階も下層階も評価は変わりません。

通常、マンションの高層階は眺望も良く人気があるため、その「実勢価格」は、同じマンション内の低層階に比べて高額となるものの、建物の評価額(相続財産評価額)は変わりません。

この大きな価額の開きを利用したものが、タワマン節税の仕組みの一つです。

実際の取引価額は下がりにくい一方で、相続税評価額を下げることのできるタワマンを購入する。

その上で、タワマン購入の際には、あえてローン融資を受け借入金を発生させ評価額(相続財産評価額)を減少させるとともに、土地・建物の評価額は他人に貸し出すと下がるというルールを利用して、さらにタワマンそのものの評価額を下げる。

こういった仕組みを利用するものがタワマン活用による節税対策です。

国税当局の方針、考え方

このようにタワマン節税には、いろいろな条件やルールに沿って行う必要があり、これらを偽装するような行為はもちろん論外です。

また、租税回避(相続税の課税を逃れる)を主目的にした事例も、国税当局から否認されている例があります。

しかし、国税当局が、タワマン節税が大々的に行われることが原因で、「入るべき税収入そのものや、入るべきであった金額が少なくなっているので何とかしたい」と考えたくなるのは自然で、想像に難くもありません。

ご存じの方もいると思いますが、普通のアパート・マンションを建設する際に、一旦支払った消費税が還付を受けられたというルールの抜け穴をついた方法が、数年前に、目に余ると考えた国税当局によって相当狭められたこともありました。

実際、タワマン節税について、国税庁の現役担当官が「不動産の値上がりで節税効果が大きくなっており、看過できないケースには適切に適用したい」とコメントしているそうです。

繰り返しになりますが、相続税における財産評価は原則「時価」とされています。

タワマン節税は基本的に適法と先に述べましたが、不動産の時価を計算するルールを定めているのは、法律ではなく「通達」というルールに過ぎません。

このルールを定めている国税庁の方針、考え方が将来も変わらないという保障はないのです。

タワマン活用による節税もほどほどに

不動産会社はもちろん、一部の金融機関や税理士が大々的にタワマン活用による節税を勧めているのですが、そういった意味でもほどほどにしてもらえればと思っています。

例えば、こんな書籍があります。
→ タワーマンション節税! 相続対策は東京の不動産でやりなさい (朝日新書)
(amazonのサイトが開きます。)

それともう一つ、タワマン活用による節税を現在行っている方で上手くいっているケースの場合でも、高リスクであることには変わりありません。

想定した入居率、家賃収入が継続して得られるのか、これを元にした融資の返済計画が何かの拍子に狂わないのか、融資を受けた金融機関による担保評価が今後も変わらないのか。

そして何より、誰かに勧められるままにタワマンを購入してしまった方が、数年間保有した後、賃貸収入の積み増し分を差し引いても本当に売却損の出ないように売り抜けることが可能なのか。

購入後にも、しっかりとリスクと運用の管理を行っていただきたいものです。

タワーマンション

【 H28.2.2 追記】

上記にて、行き過ぎた節税を今後国税庁が監視強化する方針である旨ご紹介しました。

しかし、どのようなケースが「行き過ぎた」ものに当たるかについて現時点でも示されていません。

さて、国税庁は、最近の行き過ぎたタワマン節税に関して、次のような見解を採っています。

「当庁としては、実質的な租税負担の公平の観点から看過しがたい事態がある場合には、これまでも財産評価基本通達6項を活用してきたところですが、今後も、適正な課税の観点から財産評価基本通達6項の運用を行いたいと考えています。」

(注)財産評価基本通達(平成3年12月18日付国税局長等宛国税庁長官通知。最終改正:平成27年5月12日)(抜粋)
第1章 総則
(この通達の定めにより難い場合の評価)
6 この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。
 
これでも、どの程度のものが「行き過ぎた」節税なのか分かりづらいですね、結局はケースバイケースです。

一方で、国税庁が、タワーマンションに関して売買価格を(申告時の)相続税評価額で割って「かい離率」を算出していることが判明しています。

その結果、かいり率の平均値は3.04、最大で6.93だったそうです。

この記事の最初の方で、「購入額5億円のタワマンを買うと、その評価額がわずか1億円」となるケースをご紹介していますが、5億円÷1億円ですから、かい離率は5.0となります。

今後、「3.04」という数値が、財産評価基本通達6項にある「著しく不適当と認められる財産の価額」の目安となり、この値を超えるようなものは、申告者にとって厳しい運用がなされていくことになるかもしれません。

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