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相続税の申告の際に誤りやすい14事例

今回の記事は、国税庁ホームページ掲載の「相続税の申告書作成時の誤りやすい事例集」に基づいて、当センター独自の説明、解説も一部加えて整理・作成しています。

相続税の申告書をこれから作成される方は、最新の法令等に基づき行ってくださるようお願いいたします。

(目次)
1.2割加算される相続税額
2.法定相続人に含めることのできる養子の数
3.みなし相続財産とされる生命保険金の前納保険料
4.相続税が課税される財産、課税されない財産
(1)被相続人の遺産とされる名義預金
(2)準確定申告により受け取った還付金等
(3)遺族が請求し受け取った未支給年金
(4)生命保険契約に関する権利
 ア 本来の相続財産とされる、被相続人が契約者の生命保険
 イ みなし相続財産とされる、相続人が契約者の生命保険
(5)被相続人による死亡前3年以内の贈与財産
5.相続財産の価額から差し引くことのできる債務
(1)お墓の購入する際の借入金
(2)未納となっている固定資産税・住民税
(3)団体信用生命保険により返済免除される住宅ローン


1.2割加算される相続税額


相続や遺贈のほか、相続時精算課税制度を利用した贈与によって財産を取得した人が、被相続人の一親等に当たる子(子が先に亡くなっている場合、代襲相続人となる孫を含む。)及び父母、並びに配偶者以外の人である場合には、その人の相続税額が、その相続税額の2割増しとなります。

2割加算となる対象者は、

  1. 被相続人の兄弟姉妹、相続人となった甥や姪(法定相続の第3順位に当たる方)、
  2. 被相続人の養子として相続人になった孫(代襲相続人を除く。)など

とされています。

≪事例1≫
兄の死亡に伴い、弟である私と妹は兄の法定相続人として兄の財産を相続しました。
(解説)
被相続人の兄弟姉妹が相続した場合ですが、兄弟姉妹は法定相続人であっても、被相続人の一親等の血族に該当しないため、相続税額が2割加算されます。

≪事例2≫
祖父の死亡に伴い、私の父と、祖父と養子縁組している私(祖父の孫養子)は、祖父の財産を相続しました。
(解説)
孫養子であるお孫さんは、祖父(被相続人)の一親等の血族に該当するものの、今回のケースでは、第2順位の法定相続人である父と共に相続していることから、お孫さんが代襲相続人ではないため、相続税額が2割加算されます。

≪事例3≫
祖父の死亡に伴い、私の父が祖父の死亡以前に死亡しているため私(父の代襲相続人)が、祖父の財産を相続しました。
(解説)
このケースのお孫さんは、亡くなられた祖父の一親等の血族に該当しませんが、第1順位の法定相続人である父を代襲して相続人となっているため、相続税額の2割加算はありません。


2.法定相続人に含めることのできる養子の数


相続税には、遺産などの額が一定の金額以下なら相続税がかからないという基礎控除額(非課税枠)があります(相続税法第15条第1項)。

この基礎控除額は、法定相続人の数に応じて決まり、ご存知のとおり、平成27年1月1日以降に発生した相続においては「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」とされています。

例えば、夫が亡くなり、その妻と子ども2人が相続人のケースでは、法定相続人が3人であるので、基礎控除額は4,800万円となります。

ただし、「法定相続人の数」については、民法と相続税法では異なった取り扱いとなっています。

すなわち、被相続人の養子は民法上、人数に制約なく法定相続人とされるものの、相続税法上は、基礎控除額の計算する際に養子を法定相続人として含めることができる人数は、被相続人に、①実子がいる場合は1人まで、②実子がいない場合は2人までと制限されています。

なお、相続税法上の法定相続人には、相続人の中で相続の放棄をした人があっても、その放棄がなかったものとして人数に含めることができます。

≪事例4≫
祖父の死亡に伴って、祖父と養子縁組を行っている私と弟(祖父の孫養子)と、私の父の3人が法定相続人として、祖父の財産を相続しました。
(解説)
孫養子は、民法に規定する相続人に該当するものの、遺産に係る基礎控除額を計算する際には、父が被相続人(祖父)の実子に当たることから、養子は1人までしか法定相続人の数に含めることができないため、相続税法上の法定相続人の数は2人として扱われます。


3.みなし相続財産とされる生命保険金の前納保険料


生命保険は、次の3つのメリットがあるので、スムースな遺産分割や相続税の節税に欠かせないものとなっています。

  • 相続人に「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があること
  • 預貯金と異なり、相続が発生しても直ぐに現金が受取れること
  • 相続対象の財産(遺産)ではなく保険金受取人の財産であること

さて、生命保険金は、受取人の財産でありながら、相続税法上、相続や遺贈によって取得したものとみなされる「みなし相続財産」とされています(相続税法第3条第1項第1号)。

そして、みなし相続財産である生命保険金には、本来の保険金のほか、保険契約に基づき分配を受ける剰余金、割戻しを受ける割戻金及び払戻しを受ける前納保険料で、保険金とともに受け取るものも含まれます。

≪事例5≫
夫が亡くなったため、生命保険会社から死亡保険金として1,400万円を受け取ったほか、この保険契約で夫が前納していた保険料150万円も併せて受け取りました。
(解説)
死亡保険金とともに受け取った前納保険料は、保険料には充てられずに払い戻されたものであり、一見、保険金には当たらず夫の遺産と考えがちですが、「みなし相続財産」に加えることができます。

4.相続税が課税される財産、課税されない財産


(1)被相続人の遺産とされる名義預金


例えば、預貯金口座の名義人が亡くなった方(被相続人)の子となっていても、その子の固有の財産とは認められず、被相続人の遺産として相続税の課税対象とされてしまうものがあります。

名義にかかわらず、被相続人が取得等のための資金を拠出していたものなどがこれに当たります。

上記のケースでは、被相続人がその原資を出した預貯金であり、株式・公社債・証券投資信託等で家族の名義であるものの、被相続人が実質的に管理・運用を行っていたもののほか、被相続人が購入や新築した不動産でまだ登記をしていないものなどとなります。

≪事例6≫
父の死亡後、父の自宅の金庫を開けたところ、父名義の預金通帳のほかに、私名義の定期預金証書を見つけました。この定期預金について、私はこれまでに贈与を受けたことはなく、父がその収入から預け入れ、管理・運用していたものと思います。
(解説)
名義にかかわらず、被相続人(父)が資金を拠出しているなど、また、父と子のお互いに贈与の意思も無ければ、子ども(名義)の定期預金とは認められないことから、被相続人の財産から除外できないため、相続税の課税対象となります。
いわゆる名義預貯金については、それに気づいていなくても、相続税の税務調査で頻繁に「無申告」として指摘されていますので、お気をつけください。


(2)準確定申告により受け取った還付金等


所得税の準確定申告とは、確定申告の必要な方が亡くなった場合、相続人や包括受遺者が亡くなった方(被相続人)に代わって行う必要のあるものです。

この申告によって、あらかじめ納めた源泉所得税や予定納税額の納め過ぎがあれば、還付金として返ってきます。

さて、受け取った還付金については、準確定申告による還付手続そのものを相続人等が行うことから、相続人等固有の財産と思ってしまいたくなります。

しかし、還付請求権は、被相続人の死亡後に発生するとしても、被相続人の潜在的な請求権が被相続人に帰属しており、これが被相続人の死亡により顕在化したものであるとして、還付金等(還付請求権)は本来の相続財産であり、相続税の課税対象とされています。

もちろん、所得税の準確定申告により、還付金が発生するのではなく、追加納付することとなる所得税は、被相続人の財産(相続財産)から差し引くことができる債務となります。

≪事例7≫
父の死亡後、相続人である私は、父の所得税の準確定申告書を提出し、所得税の還付金25万円を受け取りました。
(解説)
所得税の準確定申告に係る還付金は、被相続人に帰属する財産であり、相続財産に該当します。


(3)遺族が請求し受け取った未支給年金


死亡したときに支給されていなかった年金(年金受給権)を遺族が請求し支給を受けた場合は、その遺族の一時所得(所得税)の対象となり、相続税は課税されません。

なお、厚生年金や国民年金などを受給していた人が死亡したときに、遺族に対して支給される遺族年金は、原則として所得税も相続税も課税されません。

≪事例8≫
私は夫の死亡後、夫が生前に支給を受ける予定であった国民年金(未支給年金)を請求し受け取りました。
(解説)
未支給年金については、被相続人の遺族が自分の固有の権利として請求するものであり、被相続人の死亡に係る相続税の課税対象とされません。

(4)生命保険契約に関する権利


ア 本来の相続財産とされる、被相続人が契約者の生命保険


相続開始の時において、まだ保険事故(「被保険者」の死亡など)が発生していない「生命保険契約に関する権利」の価額は、相続開始の時においてその契約を解約するとした場合に支払われることとなる解約返戻金相当額によって評価した上で、被相続人の本来の相続財産として、相続税の課税対象となります。

なお、解約返戻金相当額は、契約先の生命保険会社などに問い合わせて確認します。

≪事例9≫
私は、父の死亡保険金として生命保険会社から2,500万円を受け取りました。
このほか、父が契約者で保険料を負担し、私を被保険者とする生命保険契約がありますが、私が契約者の地位を引き継いでいます(相続開始の時において、仮にその契約を解約した場合の解約返戻金相当額は450万円)。
(解説)
被相続人が保険契約者・保険料負担者で、被相続人以外の人を被保険者とする生命保険契約については、相続開始の時に死亡保険金を受け取ることはありませんが、被相続人の本来の相続財産である「生命保険契約に関する権利」として解約返戻金相当額が相続税の課税対象となります。


イ みなし相続財産とされる、相続人が契約者の生命保険


一方、亡くなった方(被相続人)が保険料を負担し、被相続人以外の人が契約者となっている生命保険契約で、相続開始の時において、まだ保険金の保険事故(被保険者の死亡など)が発生していないものは、その生命保険の契約者が相続又は遺贈により「生命保険契約に関する権利」を取得したものとみなされます。

≪事例10≫
私は、父の死亡保険金として、生命保険会社から3,000万円を受け取りました。
このほか、私を保険契約者・被保険者とする生命保険契約について、父が生前、保険料を負担していたものがあります(相続開始の時において、仮にその契約を解約した場合の解約返戻金相当額は450万円)。
(解説)
被相続人が保険料負担者で、かつ、被相続人以外の人が保険契約者・被保険者であるものがある場合には、相続開始の時に死亡保険金を受け取ってはいませんが、その生命保険の契約者が相続又は遺贈により「生命保険契約に関する権利」を取得したものとみなされ(みなし相続財産)、解約返戻金相当額が相続税の課税対象となります。


(5)被相続人による死亡前3年以内の贈与財産


相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した人は、被相続人からその相続開始前3年以内に贈与を受けた財産があるときには、その人の相続税の課税価格に贈与を受けた財産(贈与のときの価額)を、贈与税が課されていたかどうかに関係なく(いわゆる特定贈与財産を除く。)加算することとされています。

なお、贈与税が既に課されている場合は、その人の相続税額からその贈与税額を控除します。

≪事例11≫
私は、父の死亡に伴い財産を相続しましたが、父が亡くなる前年に200万円(贈与税の申告済み)、前々年に100万円の贈与を父から受けていました。
なお、前々年の100万円については、贈与税の基礎控除額(110万円)以下だったので、贈与税の申告はしていません。
(解説)
相続人が被相続人の死亡前3年以内に財産の贈与を受けている場合には、暦年課税に係る贈与税の基礎控除額(110万円)以下の贈与であっても、相続税の課税価格に生前贈与財産として加算されます。

5.相続財産の価額から差し引くことのできる債務


(1)お墓の購入する際の借入金


「債務や葬式費用」のうち、相続税の計算を行う際に相続財産の価額から差し引くことができる「債務」は、被相続人が死亡したときにあった債務で確実と認められるものです。

この債務には、借入金や未払金などのほか、被相続人が納めなければならなかった税金で、まだ納めていなかったものも含まれます。

なお、被相続人が生前に購入したお墓については、そもそも相続税の課税価格に算入されない財産(非課税財産)であることから、その非課税財産の取得に係る未払金(債務)も相続税の課税価格の計算において差し引くことはできません。

≪事例12≫
父は、亡くなる1年前に銀行からの借入れによりお墓を350万円で購入しており、相続開始日現在で220万円の借入金残高があります。
(解説)
被相続人が生前に購入したお墓の借入金など、相続税の非課税財産に関する債務は、相続税の計算上、相続財産の価額から債務として差し引くことができません。


(2)未納となっている固定資産税・住民税


相続財産の価額から差し引くことができる債務は、被相続人が死亡したときにあった債務で確実と認められるものです。

差し引くことができる債務には、借入金や未払金などのほか、被相続人が納めなければならなかった税金で、まだ納めていなかったものも含まれます。

なお、相続人の責めに帰すべき事由により納付することとなった延滞税、利子税や加算税については、債務控除の対象とはなりません。

≪事例13≫
夫の死亡に伴い、夫の財産(土地・建物)を相続しましたが、夫の死亡後に、夫が亡くなった年分の固定資産税と住民税の納税通知書が送付されました。
(解説)
相続開始日に納税通知書が送付されていない場合であっても、固定資産税と住民税の納税義務は既に成立しているため、被相続人(夫)が亡くなられた年分の未納となっている固定資産税や住民税は債務控除の対象となる債務に該当しますので、相続財産の価額から差し引くことができます。
このほか、上記の住民税と同様に、被相続人の所得税の準確定申告で納付することとなる所得税も債務控除することができます。


(3)団体信用生命保険により返済免除される住宅ローン


相続財産の価額から差し引くことができる債務は、被相続人が死亡したときにあった債務で確実と認められるものです。この中には、借入金や未払金などのほか、被相続人が納めなければならなかった税金で、まだ納めていなかったものも含まれます。

ところで、団体信用生命保険契約に基づき返済が免除される住宅ローンは、被相続人の死亡により支払われる保険金によって補てんされることが確実であって、相続人が支払う必要のない債務ですので、相続税の課税価格の計算上、債務として差し引くことはできません。

≪事例14≫
夫の死亡に伴い相続した自宅(土地・建物)は5年前に購入したもので、住宅ローンの残高は、相続開始日現在で800万円ありましたが、住宅ローンの借入れ時に契約した団体信用生命保険により、後日、返済が免除されました。
(解説)
団体信用生命保険契約により返済が免除される住宅ローンは、相続人が支払う必要のない債務ですので、債務控除の対象となる債務に該当しないこととされています。

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