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成年後見制度の利用促進のために②~成年後見制度に関する基本計画~

成年後見制度は、例えば認知症や障害によって判断能力が不十分となっている人を支援するための仕組み(法律を根拠に持つ制度)です。

同制度を利用するに当たっての主な動機は、

  1. 「預貯金等の管理・解約」(銀行から後見人を付けるよう言われた等)、
  2. 「身上監護」(病院や施設の入所契約の必要があった等)、
  3. 「介護保険契約」(要介護認定手続きの必要があった等)、
  4. 「不動産の処分」(生活費などの工面のために認知症の親の自宅を売却する必要性があった等)

という順となっています。
「成年後見関係事件の概況」(平成28年1月~12月。最高裁判所事務総局家庭局)より。
 

新しい成年後見制度が始まった平成12年4月から17年ほど経っています(平成29年4月現在)が、次表のとおり、制度の利用者は毎年増加しています。

成年後見制度の利用者数の推移(リサイズ)
出典)成年後見関係事件の概況

成年後見制度の課題

ところで、厚生労働省によると、認知症の患者数が2012年は約462万人で、25年には約700万人と高齢者の5人に1人になる見通しです。
-「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」(平成26年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業 九州大学 二宮教授)による速報値より。

しかし、約20万人という成年後見制度の利用者数(2016年12月末日現在)をみると、同制度を利用する方はもちろん、認知症の患者のみに限らないとは言え、約462万人という認知症の患者数(2012年)に比べるとき、成年後見制度については、必要とみられる方が利用に至っていないケースや、もっと利用を進めていく余地がありそうです。

一方で、成年後見の業務は多く、後見人の負担は重くなりがちと言われています。
加えて、最高裁判所によると、平成28年の後見人による不正について、被害件数502件、被害総額約26億円に上るとしています。この中には、弁護士や司法書士などの専門職が後見人となっているケース30件(被害総額約9千万円)も含まれているなど、成年後見制度は課題も認められところです。
-平成29年3月24日付け「朝日新聞デジタル」より
 

こういったことからでしょう、文字どおり、制度の利用促進のため平成28年に議員立法として成立した「成年後見制度の利用の促進に関する法律」の審議過程において、次のとおり、附帯決議が行われています。

成年後見制度の利用の促進に関する法律案に対する附帯決議(平成28.年4月5日参議院内閣委員会)

政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。
一、障害者の権利に関する条約第十二条の趣旨に鑑み、成年被後見人等の自己決定権が最大限尊重されるよう現状の問題点の把握に努め、それに基づき、必要な社会環境の整備等について検討を行うこと。
二、成年後見人等の事務の監督体制を強化し、成年後見人等による不正行為の防止をより実効的に行うため、家庭裁判所、関係行政機関及び地方公共団体における必要な人的体制の整備その他の必要な措置を十分に講ずること。
右決議する。

成年後見制度の利用の促進に関する法律

さて、前出の法律について、もう少しご紹介します。

政府は平成29年3月24日、「成年後見制度の利用の促進に関する法律」(平成28年法律第29号)に基づき、初めての「成年後見制度に関する基本計画」(成年後見制度利用促進基本計画)を閣議決定しました。

今回策定された計画は、成年後見制度の利用促進に関する施策の総合的・計画的な推進を図るための方策の一つです。

そして、この計画は概ね5年間(平成29~33年度)を計画期間としており、また、各市町村に対しても、国の制度を踏まえて市町村計画を策定するよう促しています。

成年後見制度に関する基本計画のポイント

1.利用者がメリットを実感できる制度・運用の改善

・財産管理のみならず、意思決定支援・身上保護も重視
・適切な後見人等の選任、後見開始後の柔軟な後見人等の交代等
・診断書の在り方の検討
⇒財産管理のみならず、意思決定支援・身上保護も重視した適切な後見人の選任・交代
⇒本人の置かれた生活状況等を踏まえた診断内容について記載できる診断書の在り方の検討

2.権利擁護支援の地域連携ネットワークづくり

・権利擁護支援が必要な人の発見と早期からの相談
・後見人等を含めた「チーム」(福祉等の関係者と後見人等がチームとなって本人を見守る体制)による本人の見守り
・「協議会」等(福祉・法律の専門職団体が協力して個別のチームを支援する仕組み)によるチームの支援
・地域連携ネットワークの整備・運営の中核となる機関の必要性
⇒①制度の広報、②制度利用の相談、③制度利用促進(マッチング)、④後見人支援等の機能を整備
⇒本人を見守る「チーム」、地域の専門職団体の協力体制(「協議会」)、コーディネートを行う 「中核機関(センター)」の整備

3.不正防止の徹底と利用しやすさとの調和

・後見制度支援信託に並立・代替する新たな方策の検討
(預貯金の払戻しについての後見監督人等の関与を可能とする仕組み)
⇒後見制度支援信託に並立・代替する新たな方策の検討
※預貯金の払戻しに後見監督人等が関与
 

政府は今後、本計画に基づき、関係省庁が連携して総合的かつ計画的に、成年後見制度の利用促進策に取り組むとしています。

また、新聞報道などによると、市町村単位でも、「成年後見制度の利用の促進に関する法律」に基づき、改めての利用促進策への取組例や、検討を始めたとの記事が見受けられるようになってきたようです。

そうは言っても、各自治体の取組みは、介護保険制度に関する施策に比べると今一つぱっとしないなぁと感じていますので、引き続きウォッチしていきます。

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